冠詞を理解しよう 第3回

「coffee」や「tea」は数えられる?

第2回目の授業では、「wine」という名詞を例に、数えられる名詞(可算名詞)と数えられない名詞(不可算名詞)の考え方をご紹介しました。

今回はまず初めにみなさんに質問をします。

【質問】
①「Can I get you a coffee?」という文は文法的に正しいですか。
② 正しい場合、話し手は「coffee」を数えられるもの(可算名詞)として考えていますか、または、数えられないもの(不可算名詞)として考えていますか。
③ 上の英文はどのような意味ですか。

【正解】
①「Can I get you a coffee?」は文法的に正しい文です。
② 話し手は「coffee」を数えられるもの(可算名詞)として考えています。
③ 英文は「コーヒー(一杯)飲みますか」という意味です。

【解説】
「Can I get you a coffee?」の「コーヒー」は「a coffee」となっており、「ある、ひとつの」という不定冠詞「a」が使われていることから、話し手は「coffee」を数えられるもの(可算名詞)として捉えていることが分かります。

では、話し手は「a coffee」でどのようなイメージを抱いているのでしょうか?

もうすでにお分かりの方も多いと思いますが、「a coffee」=「a cup of coffee」ですね。 


「コーヒーは液体だから不可算名詞で、不定冠詞の「a」をつけるのは文法的に間違い」と考えた方は前回の授業を復習しましょう。

前回の授業でご紹介した通り、レストランやバーでワインを注文するときに「Can I have a red wine, please?」と言うように、カフェでコーヒーを注文する場合にも「カップに入ったコーヒー」=「a coffee」と考えることで、次のように注文できます。

 Can I have a black coffee, please?
 ブラックコーヒーをひとついただけますか。

 
 複数であれば、
 Two black coffees, please.
 ブラックコーヒーをふたつください。


また、tea(紅茶)も同じように「カップに入った紅茶」=「a tea」と考えるならば、次のように注文できます。

 Can I have a tea, please?
 紅茶をひとついただけますか。


 Two teas, please.
 紅茶をふたつください。


一方、話し手がcoffeeやteaを数えられないもの(不可算名詞)としてイメージした場合は、

 Would you like tea or coffee?
 紅茶かコーヒーはいかがですか。


または、次のように「a cup of ~」という表現を用いることもできます。

 Would you like a cup of tea or coffee?
 紅茶かコーヒーを1杯いかがですか。

なお、ティーポットで紅茶を頼みたい場合は

 Can I have a pot of tea, please?

 ※「pot」とは「ティーポット」の意味です。

また、以下の文でもcoffeeやteaを数えられないものとしてイメージしています。

Tea and biscuits will be provided at 3pm.
紅茶とビスケットが午後3時に提供されます。

Let’s talk over coffee.
コーヒーを飲みながら話そう。

コーヒーや紅茶といえば、液体なので=「不可算名詞」と覚えている方も多いと思いますが、ワインと同じように、話し手のイメージによっては「可算名詞」にもなることを覚えておきましょう。

冠詞を理解しよう 第2回

「wine」は数えられる?

第1回目の補講では、「sugar」という名詞を例にして、話し手がどのような「sugar」をイメージしているかによって「sugar」が可算名詞にも不可算名詞にもなるというお話をしました。

今回は「wine」(ワイン)を例に考えてみます。

まずは以下の文を読んでください。

Wine makes me sleepy.
(ワインを飲むと眠くなる)
Do you enjoy wine?
(ワインは好きですか?)
Can I get you some more wine?
(ワインをもっといかがですか)
I drink alcohol but only wine and champagne.
(お酒はワインとシャンパンだけ飲みます)
Gin and white wine are used in the sauce.
(ジンと白ワインがソースに使われています)

上の例文では、話し手はいずれもwineを数えられないもの(不可算名詞)として考えています。

ワインは液体なので1つ、2つのように数えることは難しいからですね。

このようにwineを数えられないもの(不可算名詞)として考えたときにwineの量を示したい場合は、「glass」(グラス)や「bottle」(ボトル)の数で表現します。

 John poured her a glass of wine.
 ジョンは彼女にワインを1杯注いだ


 She brought a bottle of wine to the party.
 彼女はパーティにワインを1本持ってきた


また、レストランやバーでワインを注文する場合は次のように言います。

 Can I have a glass of white wine, please?
 白ワインを1杯もらえますか。


 Can I have two glasses of red wine, please?
 赤ワインを2杯もらえますか。

 
この場合、glass(グラス)という単位でワインの量を表しているので、話し手はwineを数えられないものとして捉えていることが分かります。

また、赤ワインを1杯注文したい場合に「a glass of ~」という表現を使わずに、次のように言うこともできます。

 Can I have a red wine, please?
 赤ワインをひとつもらえますか。

 
この場合、「a」(ある、ひとつの)という不定冠詞を使っていることから、話し手はwineを1つ、2つのように数えられるもの(可算名詞)として考えていることが分かります。

これは一体どういうことでしょうか?

この場合に話し手は、
「a red wine」=「a glass of red wine」(1杯の赤ワイン)を意図しています。

グラスに入ったワインなら1つ、2つと数えることができますね。日本語でも居酒屋で飲み物を注文するときに「赤ワイン1つと生中1つ」のように言うことがあると思います。

このように、レストランやバー、カフェなどのメニューに載っている商品・品目としての「グラスワイン」は数えることができます。

さらに、ワインは「カリフォルニアワイン」や「チリワイン」のように生産地で区分することもありますが、その場合にも「wine」を数えられるもの(可算名詞)として考えることができます(=単数形にも複数形にもなる)。

例えば、チリ産のワイン(チリワイン)について話す場合、チリワインの中でもさまざまな銘柄がありますので「チリワイン全般」を指したい場合は「wine」を複数形の「wines」にすることができます。

例:Chilean wineare superb.
  チリワイン(全般)は素晴らしい。

また、ワインは「甘口」「辛口」のように、テイストの違いで表現することがありますが、この場合も可算扱いになります。

a dry white wine 辛口の白ワイン
a sweet red wine 甘口の赤ワイン

ワインは液体なので=不可算名詞と考えてしまうかもしれませんが、sugarと同じように、話し手のイメージによって可算名詞になったり、不可算名詞になったりするので注意が必要です。


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冠詞を理解しよう 第1回

「sugar」は数えられる?

今回からの補講は、多くの英語学習者の方が苦手とする「冠詞」をテーマにお話をしていきます。

冠詞を理解するためにはまず、英語には「数えられる名詞(可算名詞)」と「数えられない名詞(不可算名詞)」という名詞に対する2通りの考え方があることを理解しなければなりません。

では、この名詞に対する考え方を理解するために、次の2つのことを頭に入れましょう。

① 名詞の多くが可算名詞にも不可算名詞にもなる。
② 対象のものを話し手がどのように捉えているかで可算名詞か不可算名詞かを使い分けている。

それでは、今回は「sugar」(砂糖)という単語を例に考えてみましょう。

 I don’t take sugar in my tea.
 
私は紅茶に砂糖を入れません。

砂糖は細かい粒状なので、話し手は1つ、2つのようには数えられないもの(不可算名詞)として、写真のようなsugarをイメージしています。

このようにsugarを数えられないもの(不可算名詞)として考えたときにsugarの量を表したい場合は、次の表現を用います。

two teaspoons of sugar 
小さじ2杯の砂糖
three tablespoons of sugar 
大さじ3杯の砂糖

写真の小さなスプーンが「teaspoon」(ティースプーン)で、日本でいう「小さじ」、大きなスプーンが「tablespoon」(テーブルスプーン)で「大さじ」にあたります。

また、英語のレシピでは砂糖の量を次のように表現します。

Add a teaspoon of sugar.
小さじ1杯の砂糖を加える
Add three tablespoons of sugar.
大さじ3杯の砂糖を加える

今度は、話し手が次のように言った場合を考えてみましょう。

 How many sugars do you take in your tea?
 紅茶に砂糖をいくつ入れますか。


sugarがsugarsという複数形になっていることから分かるように、話し手はsugarを1つ、2つという数えられるもの(可算名詞)として捉え、次のような砂糖をイメージしています。

細かい粒状の砂糖を一粒、二粒のように数えるのは難しいですが、写真のように「~個の角砂糖」や「スプーン~杯分の砂糖」と考えると、砂糖も数えることができます。

sugarのように可算名詞にも不可算名詞にもなる名詞は他にもたくさんありますので、次回以降にご紹介していきます。

Remember!
① 名詞の多くが可算名詞にも不可算名詞にもなる。
② 対象のものを話し手がどのように捉えているかで可算名詞か不可算名詞かを使い分けている。